CCSニュースファイル
   2004年7−9月

  • 遺伝研と富士通が世界最高速のXML型バイオデータベース共同開発へ
     2004.07.09−国立遺伝学研究所と富士通は7日、XML技術を利用して世界最高速の次世代バイオデータベースを共同開発すると発表した。バイオ分野では、蓄積される情報量が急速に拡大し続けているため、研究を円滑に進めるためにも検索速度の高速化が求められている。すでに開発したプロトタイプは、現行システムの100倍以上の検索速度を達成しているとしており、さらなる開発を通して同分野のデファクトスタンダード技術になることを目指していく。
  • 東京高裁がトライポスのFlexXに販売差し止め命令
     2004.07.14−東京高等裁判所が、トライポス社のドッキングシミュレーションソフト「FlexX」の国内における販売差し止めを命じた。医薬分子設計研究所などが特許に抵触しているとして、トライポスの総代理店である住商エレクトロニクスを訴えていたもの。今年の2月27日に判決が出ており、現在同製品の販売は行われていない。 ソフトウエアの媒体(この場合はCD-ROM)を対象とする差し止めが認容された判例として非常にめずらしいケースになるという。
  • アクセルリスがナノテク向けCCS開発でコンソーシアムをスタート
     2004.07.15−アクセルリスは、ナノテクノロジー分野の研究開発を支援するための統合ソフトウエア技術の実用化を目指す「ナノテクノロジーコンソーシアム」を今月から立ち上げた。今後、日米欧の材料メーカー/デバイスメーカーなどの参加を本格的に募り、開発資金を集めるかたちでシステム構築を進める。参加メンバーはプロジェクトの方向性を決め、開発成果をいちはやく利用できるメリットがある。期間は3年間で、費用は約2,000万円。この分野のCCS技術はほとんど未踏領域であり、プロジェクトの行方が注目される。
  • 住商エレがJBIRCにドッキング向けグリッドソリューションを導入
     2004.07.22−住商エレクトロニクスは21日、バイオ研究向けのグリッドコンピューティングソリューションをバイオ産業情報化コンソーシアム・産業技術総合研究所生物情報解析センター(JBIRC)に納入したと発表した。これは、同社が代理店を努めている米ユナイテッドデバイセズが開発した「Grid MP」と呼ばれるソフトウエアで、JBIRCセンター内で利用されている100台の事務用パソコンをグリッド化した。たん白質と薬物分子とのドッキングシミュレーションに活用する。
  • NECと高知大がペプチド予測ソフトでC型肝炎ワクチン候補物質を発見
     2004.07.24−NECは22日、高知大学との共同研究により、C型肝炎に対する予防および治療効果が期待できるペプチド医薬品の候補物質を発見したと発表した。これは、昨年6月から推進しているプロジェクトで、細胞内のHLA(ヒト白血球抗原)分子に結合するペプチドを高精度で予測するソフトウエアを開発し、それを用いて実際に候補物質を見いだすことに成功した。今後、この候補物質が免疫機構の活性化を促すかどうかの確認実験を経て、具体的な臨床試験に進む予定である。
  • 「戦略的基盤ソフト」のABINIT-MPバイオステーションが12月にバージョン1
     2004.07.27−文部科学省ITプログラム「戦略的基盤ソフトウエアの開発」プロジェクトのたん白質−化学物質相互作用解析グループ(中野達也リーダー、国立医薬品食品衛生研究所)は、医薬候補化合物のドッキングシミュレーションに利用できるソフトウエアを「ABINIT-MPバイオステーション」の名称で開発、12月をめどにバージョン1を完成させ、年度内のプログラム公開を目指す。コアの計算機能のグレードアップとともに、関連データベースや解析・ユーザーインターフェースモジュールなど、周辺部分も形になり始めており、プロジェクトの最終年度である2006年度に向けて実証研究のフェーズに入っていく。
  • 新生アクセルリス:マーク・エムケア社長兼CEOインタビュー
     2004.08.03−コンピューターケミストリーシステム(CCS)最大手の米アクセルリスが新体制で再スタートした。今年4月に、創薬ベンチャーであるファーマコピアの子会社という位置づけから、ソフトウエア専業の独立会社に変わった。「3−5年の長期的視野で健全な成長を目指したい。先端のサイエンスを重視する当社の原点に立ち戻り、開発部門のクオリティ向上に全力を傾ける」と述べるマーク・エムケア社長兼CEOにこれからの戦略を聞いた。
  • 菱化システムがMOEに材料設計支援機能を追加、計算化学機能強化
     2004.08.05−菱化システムは、加ケミカルコンピューティンググループ(CCG)の汎用型コンピューターケミストリーシステム(CCS)である「MOE」に材料設計などに活用できる高度な分子シミュレーション機能を追加し、販売・出荷を開始した。ポリマーなどの鎖状高分子や凝集状態にある分子群、結晶構造などの複雑な分子系の動的な挙動を解析できる。MOEの追加機能として既存ユーザーには無償で提供され、欧米のユーザーにも一部配布される予定。来年以降は、さらにパフォーマンスをあげるため、MOEのコア部分への組み込みも行うが、自社開発した利点を生かし、積極的にユーザーからの要望を集めて機能の追加や改良を進めていく。
  • 日立ソフトが生命情報科学マイニングシステムのSIサービスを開始
     2004.08.06−日立ソフトは5日、膨大なライフサイエンス関連情報をテキストマイニング技術で網羅的に検索できるようにした「DNASIS GeneIndex」(ジーンインデックス)のサービスを強化し、これまでのASP(アプリケーションサービスプロバイダー)形式に加え、ユーザーの研究所内などに設置できるインハウスシステムを実現するためのシステムインテグレーション(SI)サービスを開始したと発表した。セキュリティ面が強固になるほか、社内で蓄積した情報を統合できるなどの利点がある。費用は4,700万円からで、初年度5億円の売り上げを見込んでいる。
  • 日本ユニシスが北大などと“誘導適合”対応のSBDD開発プロジェクト
     2004.08.10−日本ユニシスは9日、経済産業省の地域新生コンソーシアム研究開発事業に応募し、北海道大学をはじめとする1大学/5企業のプロジェクトとして採択されたと発表した。名称は「NMR(核磁気共鳴)スクリーニングと誘導適合構造解析に基づく抗がん剤デザイン」で、2006年3月末までに新しい効果的な創薬研究手法の確立を目指す。医薬候補化合物とそのターゲットになるたん白質との両方の分子構造を変化させて、精密な結合状態を解析する“誘導適合”の考え方を盛り込んだことが最大の特徴で、新発想のストラクチャーベースドラッグデザイン(SBDD)につながると期待される。
  • 英マトリックスサイエンスが日本法人を設立、年末にはLIMSにも進出
     2004.08.12−たん白質の同定システムで世界トップシェアの英マトリックスサイエンスが日本法人を設立し、日本市場で独自の活動を開始した。データベースをもとにして、質量分析(MS)データからたん白質を同定する「MASCOT」の販売に加え、年末にはデータ管理システム「インテグラ」を製品化し、LIMS(研究所統合情報システム)分野にも進出する。日本法人の設立によって、技術サポートなどを充実させ、国内ユーザーの要望を開発にも反映させていく考え。とくに、プロテオーム研究の支援に力を入れていく。
  • 富士通がケンブリッジソフトの電子合成実験ノートソリューション
     2004.08.20−富士通は、製薬・化学会社などの研究開発業務を革新する新ソリューションとして、電子合成実験ノートシステム「CS Eノートブック・エンタープライズ」を9月から本格的に販売開始する。手書きの実験ノートを電子化して置き換えるもので、過去の合成実験ノウハウの有効活用を促すとともに、業務上のボトルネック解消やムダな実験の排除などに効果がある。実験をしたらノートを付けるということは研究における業務フローに組み込まれた作業であり、同社ではシステムダウンが許されないミッションクリティカルなアプリケーションとして、エンタープライズレベルでのシステム構築・サポート体制をとっていく。
  • NECと日本化薬がインシリコスクリーニングでがん治療薬候補物質を発見
     2004.08.26−NECと日本化薬は25日、2002年より推進していた共同研究の成果として、新しいがん治療薬の候補化合物の発見に成功したと発表した。約140万化合物のバーチャルライブラリーを用いたインシリコスクリーニングによって数100の候補を選び出し、実験によって創薬ターゲットに対する結合性を評価した結果、数10個程度の有望な候補を絞り込むことができたもの。日本化薬がこの成果をベースに新規がん治療薬の開発を進める一方、NECは来年度をめどに今回のシステムを製品化し、創薬支援事業に結びつけていく。
  • 英インテリドスが創薬・バイオ研究向け情報アクセスツールを開発
     2004.08.31−英インテリドス(アンドリュー・ペインCEO)が、医薬・バイオ分野の研究開発に有効な情報アクセスツール「HyperDossier」(ハイパードーシエイ)と「クエリーコンストラクター」を製品化した。研究者のための一種の情報ポータルを自由に設定・構築できるソフトで、強力な検索機能を備えていることが特徴。データベース(DB)の構造や照会言語などのIT(情報技術)の専門知識なしに必要な情報を引き出すことができる。Javaベースのウェブサーバー上で稼働し、ブラウザーで利用できるため生物系の研究者にも使いやすい。
  • アドバンスソフトが文科省プロジェクト「戦略的基盤ソフト」の解説書を刊行
     2004.09.02−アドバンスソフトは、文部科学省ITプログラム「戦略的基盤ソフトウエアの開発」プロジェクトで作成されている先端シミュレーションソフトを利用するために役立つ解説書を刊行した。たん白質を対象にした量子化学計算プログラム「ProteinDF」と「ABINIT-MP」、第一原理計算シミュレーター「PHASE&CIAO」、流体解析ソフト「FrontFlow/red」をそれぞれ解説した4冊があり、試用版のソフトウエア本体をCD-ROMに収録しているため、学んだ事柄を実際に試してみることが可能。価格は各3,150円。
  • ヒューリンクスがニューラルネット利用物性予測ツールを発売
     2004.09.07−ヒューリンクスは、スイスのエキスパートソフト社(ラインハルト・ソワー社長)が開発した化学データベース(DB)とニューラルネットワークを利用した物性予測システム「ChemBrain」を本格的に発売した。DBを読み込んで学習用のデータセットにできることが特徴で、幅広い化合物の系に対する柔軟性や適応性に優れている。Windowsで簡単に利用でき、ソフト価格は20万6,000円。製薬会社の研究所向けなどに初年度500本の販売を見込んでいる。
  • MDLが全世界で呼称を“Elsevier MDL”に変更、親会社との一体化強調
     2004.09.15−ケムインフォマティクス最大手のMDLインフォメーションシステムズは、親会社である学術出版大手のエルゼビアとの一体化戦略を推進、全世界で呼称を「Elsevier MDL」(エルゼビアMDL、登記上の社名は変更なし)に統一することにした。新薬の研究開発に役立つ高機能なソフトウエアや豊富なデジタルコンテンツを総合的なソリューションとして提供していく。統合製品の共同開発などにも乗り出す。国内では、日本MDLにエルゼビア・ジャパンから専任営業を受け入れ、国内のユーザー各社にエルゼビアのオンラインサービスを紹介していく。
  • サイバネットシステムがライフとナノテクでCCS市場に新規参入
     2004.09.25−サイバネットシステム(本社・東京都文京区、井上惠久社長)が、コンピューターケミストリーシステム(CCS)市場に新規参入した。専門の「新事業推進室」を設け、バイオ/ライフサイエンス分野とナノテクノロジー分野に焦点を当てて、研究開発を支援するパッケージソフトウエアを提供していく。とくにライフサイエンス分野では、三井物産系のシステムインテグレーターであるアダムネットから関連ソフトの営業権を移管されてCCS事業を継承したかたちとなっており、今後の展開が注目される。
  • Elsevier MDLが次期主力プラットホーム製品「Isentris」を開発
     2004.09.29−Elsevier MDL(エルゼビアMDL)は、統合化学情報管理システムの次世代システムである「Isentris」(アイセントリス)を開発した。現行の「ISIS」の後継製品となるが、5年程度は両製品を併存させ、徐々に移行を進める計画。今年末にバージョン1.0をリリースする予定で、年内は既存ユーザーへのデモや紹介を中心とし、来年以降に本格的な販売活動に入る。IT分野の業界標準に完全準拠していることが最大の特徴であり、まずはISISを補完するアプリケーションから普及を図っていく。
  • ヒューリンクスがPDAを利用した無線対応の分子モデリングシステム
     2004.09.30−ヒューリンクスは、携帯情報端末(PDA)からの無線環境で分子シミュレーションを実行できる計算化学システムの販売を開始した。加ハイパーキューブ社が開発したウィンドウズ版分子モデリングシステム「HyperChem」を利用したもので、実験研究者向けに無線LAN環境と合わせたシステム販売も行っていく。

 

**************<一般ITニュース>***************

 

  • NETWORLD+INTEROP2004:マイクロソフト・バルマー社長基調講演
     2004.07.08−マイクロソフトのスティーブ・バルマー社長兼CEOは、6月30日から7月2日まで千葉県・幕張メッセで開催されたNETWORLD+INTEROP2004TOKYOの基調講演に登場し、「ITライフサイクル−セキュリティ強化と管理性の向上を目指して」と題して講演した。バルマー社長は「犯罪的なハッカーの活動が活発化してきており、企業のITプロフェッショナルの役割はますます重要性を増している」とし、近く提供が予定されている「WindowsXPサービスパック2 セキュリティ強化機能搭載」、および「Internet Security & Acceleration サーバー2004」のデモンストレーションを実施した。
  • 住商エレと日本IBMが低価格無停止型サーバーを発売、初のブレード型も
     2004.07.09−住商エレクトロニクスと日本IBMは8日、手軽に導入できる無停止型(フォールトトレラント)サーバーの新製品を発表した。ハードとソフトを組み合わせることで、一般的なIA(インテルアーキテクチャー)サーバーに無停止機能を付加することが可能。とくに今回、IBMのブレードサーバーを使用したモデルと、床置きできるミニタワー型モデルを追加しており、バリエーションが大きく広がった。無停止型市場の裾野拡大に向けて、両社共同で積極的な取り組みを進めていく。
  • 米デルのケビン・ロリンズ新CEOが会見、トップシェアへの意欲示す
     2004.07.28−デルの新しいCEO(最高経営責任者)に就任したケビン・ロリンズ社長兼CEOが27日、東京で記者会見を行い、あらためて日本市場への意欲を示した。ロリンズ氏は16日付けで新CEOになったばかりだが、2001年から社長兼COOとして経営に当たってきており、とくに創業者であるマイケル・デル会長との役割分担や責任範囲の変更などはないという。ただ、同社の初のトップ人事として、今後のロリンズCEOのかじ取りが注目される。
  • マイクロソフトのローディング社長が新年度方針、セキュリティ・Linuxが課題
     2004.08.13−マイクロソフト日本法人のマイケル・ローディング社長は、7月から同社の2005年度がスタートしたことを受け、新年度の経営方針に関する記者説明会を開催した。ローディング社長は最大の課題として、セキュリティ問題とLinuxなどとの競合を取り上げ、課題解決への自信を示した。また製品やサービスの面では、日本市場の状況やニーズに合わせた戦略を推進していくと表明した。
  • サン・マイクロがProject Looking Glassのプレスセミナーを開催
     2004.09.02−サン・マイクロシステムズは8月31日にプレスセミナーを開催し、次世代デスクトップ環境として開発中の“Project Looking Glass”(ルッキンググラス)を紹介した。説明者は、米サンのソフトウエアCTOオフィスに所属している川原英哉氏で、Looking Glassを開発した本人だという。「三次元空間を使うことで現在の二次元のデスクトップをさらに使いやすくすること、および単一の企業に支配されてきたデスクトップ環境の進化をオープンソースコミュニティに委ねることで新しい流れを引き起こそうというのが、このプロジェクトの最大の狙いである」と説明する。
  • マイクロソフトがWindowsXPのSP2をリリース、全国の郵便局でも配布
     2004.09.02−マイクロソフトは1日、WindowsXPのセキュリティ機能を強化した「サービスパック2」(SP2)を開発し、2日から無償配布をはじめると発表した。インターネットを通じてダウンロードできるほか、CD-ROMを全国の郵便局の窓口で入手できるようにする。記者発表会には総務省情報通信政策局の情報セキュリティ対策室課長補佐が同席し、異例にも国民に対して「1日も早い導入を」と呼びかけた。
  • 戦略的基盤ソフトの統合プラットホームグループがPseWB2.0を公開
     2004.09.07−文部科学省ITプログラム「戦略的基盤ソフトウエアの開発」(FSIS)プロジェクトの統合プラットホームグループは、流体解析と構造解析などの異なる解析機能を連携させ、複雑な工学的問題を効率良く解くことができる「PseWB2.0」の公開を開始した。解析の手順をシナリオとして記述し、それを保存・再利用することで、高度な解析ノウハウを共有することが可能。FSIS内の他グループが開発中の次世代流体解析システム「FrontFlow」や次世代構造解析システム「NEXST」に対応させており、産業機械の設計や医用画像シミュレーションなどに応用した事例がある。システムはFSISのホームページから誰でもダウンロードできる。
  • NECがLinux事業を基幹系ソリューション分野に本格展開、技術者倍増へ
     2004.09.28−NECは27日、Linuxを基幹ソリューション構築のためのプラットホームとして正式に位置づけ、ビジネス拡大に向けて経営資源を本格的に投入していくと発表した。UNIXとWindowsを中心にしたオープンミッションクリティカル系で培った豊富な実績を全面的にLinux事業に反映させ、次世代の主力事業に育成していく。システムインテグレーション(SI)、サポート・サービス、プラットホームの3分野で大幅な事業体制の強化を図り、2007年にLinux事業全体で900億円の売り上げを目指す。

 


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