CCSニュースファイル
   2003年10−12月

  • CCS特集2003年秋

1部:総論業界動向

2部:主要ベンダー各社の製品戦略

 

  • ヒューリンクスがバイオアプリケーションの並列システムを発売
     2003.10.10−アルゴグラフィックスグループのヒューリンクス(本社・東京都渋谷区、滝沢治雄社長)は、異機種混在環境でバイオインフォマティクスなどの科学技術分野の高速並列計算を実現する「TurboWorx」(商品名)の販売を開始した。米ターボワークス(本社・マサチューセッツ州、ジェフ・オーゲン社長)が開発した製品で、ユニークなワークフロー機能によって連続したプログラム処理を自動的に実行させる機能を持つ。バイオ分野などのアプリケーション開発・実行環境としてシステムインテグレーターなどの開発者向けに売り込んでいく。
  • 三井情報開発が遺伝子情報匿名化システムSCTS21の最新版を発売
     2003.10.16−三井情報開発(MKI)は、遺伝子情報などの人間から採取した試料をプライバシーを確保しつつセキュアに取り扱うための匿名化システム「SCTS21」(商品名)の最新版を販売開始した。バーコード管理機能を追加することで匿名化された検体の取り違えを防ぐなど、人的ミスをなくすことを重視しており、病院や研究所向けの現実的なソリューションとしての機能が高まった。実験装置や関連ソフトを組み合わせたシステムインテグレーション(SI)や匿名化業務に関するコンサルテーションにも力を入れていく。
  • NECソフトが九州大学とたん白質結晶化機構解明のための共同研究
     2003.10.17−NECソフトは16日、九州大学と共同で、たん白質の結晶化メカニズムを解明するための新しい解析装置を開発、本格的な共同研究を開始すると発表した。現在、特定の病気に対する特効薬の開発や特定の個人に合わせたテーラーメード医療の実現に向けて、たん白質の立体構造を数多く解明することが急務だといわれているが、たん白質を結晶化することが難しい場合が多く、研究の進展に対する障害となっている。今回の共同研究は、結晶化メカニズム自体を解明することにより、たん白質研究の前進に貢献しようというもの。この装置を実際に利用して、2006年の初めまでに一定の成果を出したいとしている。
  • CASがオンライン検索サービスの最新版SciFinder2004を提供開始
     2003.10.23−米国化学会(ACS)の一部門であるケミカルアブストラクツサービス(CAS)は、オンライン情報検索サービスの最新版「SciFinder2004」の提供を開始した。とくに、化学反応の検索機能が大幅に強化されており、利用者は登録されている700万件の化学反応情報を簡単に駆使することができる。有機合成研究の生産性・効率性・創造性の向上に寄与する。研究開発にますますスピードが要求される現在、特許などの他社の動向を知って研究の重複をなくしたり、技術導入の可能性を探ったりするような迅速な判断が必要不可欠とされる。その意味で、今回のサービスは化学・製薬企業の大きな武器になりそう。
  • サン・マイクロが北海道大学にバイオインフォの寄付講座を開設
     2003.10.23−サン・マイクロシステムズは22日、北海道大学に寄付講座として「計算分子生命科学講座」を開設し、次世代ポストゲノム研究の推進と人材育成を目的とした産学連携活動に取り組むと発表した。とくに、医療や新薬への応用が期待される“糖鎖”に焦点を当て、コンピューターを効果的に利用したシミュレーションやバイオインフォマティクス手法によって研究を推進していく。
  • インフォコムがADMEデータベースを発売、FDA承認薬対象に再試験
     2003.10.31−インフォコムは、米国合弁会社であるライトハウスデータソリューションズ(本社・ペンシルバニア州、ロバート・ポールソン社長)で製品化したADME(吸収・分布・代謝・排出)データベース「The ADME Index」(ADMEインデックス)の販売を世界同時に開始した。既存の代表的な医薬品に関するADME特性を統一的なプロトコルで試験しなおしたもので、新薬の研究や開発において、候補化合物の薬物特性を予測・検討する際などに役立つ。利用料金は年間購読制で、初年度450万円。
  • 富士通と富士通研究所がたん白質解析専用サーバーを開発、実証実験へ
     2003.11.06−富士通は5日、富士通研究所と共同でたん白質の立体構造シミュレーションを超高速で実施する専用サーバー「バイオサーバー」(開発コード名)を開発、実証実験に入ると発表した。バイオインフォマティクス分野での共同研究相手であるゾイジーン、さらには新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)プロジェクトを通してシステムの実用性を評価し、来年以降に製品化の検討に入っていく。プロセッサー(CPU)の数に比例した並列高速処理を実行できるのが特徴で、計算で60年以上かかっていた処理、あるいは実験で1ヵ月程度かかる解析を12日間で行うことができるという。
  • 富士通と東海大が創薬支援計算化学の実証実験に成功、localSCF実用化
     2003.11.11−富士通と東海大学は11日、コンピューターを利用して新薬の探索を行う計算化学技術の実証実験に成功したと発表した。半経験的分子軌道法の高速計算手法である“”ローカルSCF法”(局所自己無撞着場法)を世界で初めてプログラム化し、HIVプロテアーゼと実際に臨床試験中の数種類の阻害剤とのドッキングシミュレーションを実施したもの。精度と計算時間が実用域に達したことから、動物実験などの削減を含め、新薬開発の時間と経費を節減できることが実際に確認できたとしている。富士通では、今回のプログラムを「CAChe localSCF」として製品化し、全世界の製薬会社などに向けて売り込んでいく。
  • NECがバイオ文献マイニングツールを開発、同義語・多義語辞書搭載
     2003.11.14−NECは、テキストマイニング技術をバイオメディカル分野の文献検索に応用したマイニングツール「Biocompass」(バイオコンパス)を開発、12月1日から販売を開始する。米エックスマイン社(本社・カリフォルニア州、サンディップ・レイ社長兼CEO)の基本技術をベースに、NEC独自のマイニング技術を組み合わせることにより、「正確な遺伝子/たん白質名の認識」や「関連キーワード2段階検索」などの機能を実現した。ソフト価格は1,000万円で、今後3年間に100本の販売を見込んでいる。
  • 菱化システムが米イーオンおよび加CCGと共同で材料系CCSを開発
     2003.11.18−菱化システムは、米イーオンテクノロジーおよび加ケミカルコンピューティンググループ(CCG)と共同で、材料設計支援のためのコンピューターケミストリーシステム(CCS)を開発する。来年3月をめどにパッケージソフトとして製品化し、全世界で売り出す。近年のCCS市場は医薬開発を目的としたシステム一色となり、ポリマー設計をはじめとした材料科学向けシステムは極端に数が少ないのが現状。菱化システムは、15年以上のCCS事業の経験があるが、自社でパッケージ開発に取り組むのは初めてであり、最新の計算化学技術を導入したシステムの中身も含めて、今後が注目される。
  • インフォコムが遺伝研GIBのインハウス版を製品化、微生物比較ゲノム解析
     2003.11.22−インフォコムは21日、国立遺伝学研究所と共同開発した微生物比較ゲノム解析システム「GIB」を製品化し、「GIBOX」の名称で一般販売を開始すると発表した。解析ソフトウエアとデータベースがインストールされたサーバーをセットにして販売するもので、初期費用を抑えて導入しやすくするために年間使用ライセンス方式で提供する。GIBの全機能をインハウスで利用できるため、研究機密のセキュリティを意識する必要がない。製薬会社などでの導入を見込んでいる。
  • 菱化システムが米シンセマティクスの合成経路設計支援システムを発売
     2003.12.03−菱化システムは、米シンセマティクス(本社・ノースカロライナ州、スティーブ・ジョーンズCEO)と販売総代理店契約を締結、有機合成経路設計支援システム「ARTHUR」(アーサー)の販売活動を開始した。有機合成を知りつくした熟練研究者のノウハウを写し取った一種のエキスパートシステムで、目的の化合物を得るための出発物質や中間物質、その反応条件や収率などを知ることができ、目的物に至る合成経路を幅広く探索する機能を持っている。来年3月にはスタンドアロン版をリリースする予定で、価格は390万円。
  • 日本MDLが独自の特許情報DBを提供、化合物・反応情報の詳細を網羅
     2003.12.08−日本MDLインフォメーションシステムズは、化合物に関する特許情報データベース(DB)事業に新規参入した。同社の化学DB管理システム「CrossFire」で利用できるDBコンテンツとして、またオンライン検索サービス「ディスカバリーゲート」に組み込んで提供する。特許DBはすでに各種のものがあるが、化合物や化学反応に関する詳細情報は収録されていない場合が多かったという。新DBは250万化合物と40−50万件の反応情報を網羅し、来年春にリリースされる予定。
  • 富士通が材料設計MaterialsExplorer3.0を発売、MD計算の使い勝手向上
     2003.12.19−富士通は、半導体やナノテクノロジーなどの材料研究に役立つコンピューターケミストリーシステム(CCS)を機能強化し、「Materials Explorer 3.0」(マテリアルズエクスプローラー)として25日から販売開始する。分子動力学法(MD)に基づいて材料物性をシミュレーションすることができ、材料のバルク状態から表面・界面までを原子・分子レベルで解析することが可能。MDは使いこなすために独特のノウハウが必要で、敷居が高い計算理論だといわれていたが、今回の最新版では初心者でもMDシミュレーションが実行できるように操作性などが大幅に改善されている。Windowsで利用でき、ソフト価格はマスター版で120万円。2年間で2億円の売り上げを見込んでいる。
  • インフォコムがシュレーディンガーの創薬支援ソフトの新製品を2種発売
     2003.12.23−インフォコムは、米シュレーディンガーが開発した新パッケージソフトウエアとして、たん白質の立体構造を予測する「Prime」と三次元分子構造を自動発生させる「LigPrep」の2種類を新たに販売開始した。今回、シュレーディンガーの創薬支援パッケージがすべてバージョンアップされており、新製品と合わせることでストラクチャーベースドラッグデザイン(SBDD)のためのトータルソリューションが完成した。標的たん白質の構造にフィットした薬物分子設計を行うことが可能。製品群が整ってきたため、新しいライセンス体系も導入する予定である。
  • 日立ソフトとDNAチップ研究所が遺伝子発現データ解析サービスを開始
     2003.12.24−日立ソフトとDNAチップ研究所は22日、DNAチップを用いた遺伝子発現データの統計解析サービスを提供開始すると発表した。DNAチップから得られる大量データの中から有用な情報を取り出すための手法はかなり専門的で煩雑であり、小規模な研究機関では活用が難しい側面もあった。今回のサービスは、DNAチップ市場の裾野の拡大にも寄与すると期待されている。
  • Oracleデータベース10gがバイオインフォ向け新機能を搭載、BLAST内蔵
     2003.12.27−オラクルの新型データベース製品「Oracleデータベース10g」に組み込まれているバイオインフォマティクス向け新機能の概要が明らかになった。12月17−18日に東京ビッグサイトで行われた“オラクルワールド東京”のコンファレンスの中で日本オラクルが公開したもの。大量の遺伝子情報を利用した統計解析やデータマイニングのための特別な機能を内蔵しているほか、生物学的な相互作用情報を効率良く格納・検索できるようにする「ネットワークデータモデル」の採用、塩基配列の相同性検索で多用されるBLASTアルゴリズムをカーネルに埋め込むなどの特徴を備えている。

 

**************<一般ITニュース>***************

 

  • 日本オラクルが次世代製品Oracle10gを発表、企業向けグリッド環境を実現
     2003.10.07−日本オラクルは6日、次世代製品「Oracle10g」(オラクル10g)を来年1月29日から出荷開始すると発表した。企業向けの本格的なグリッドコンピューティング環境を具体化した製品で、複雑なシステムの運用管理を自動化する機能も組み込まれている。同社では、出荷開始に向けて、国内のパートナーと協力して技術検証施設の開設や対応技術者の養成、対応パッケージ製品の開発支援活動、開発者向けの早期アクセス制度などを展開していく。
  • 産総研と三菱電機が組込み用世界最小Linuxサーバーを開発
     2003.10.10−産業技術総合研究所のサイバーアシスト研究センター(CARC)と三菱電機の情報技術総合研究所は、Linuxが稼働する世界最小クラスのマイクロサーバーを開発した。コンパクトフラッシュ(CF)カードサイズの本体に、無線で自動的にインターネット接続ができるミドルウエアを組み込んだもので、情報家電などの組み込み用途に向けて技術開発をさらに進めていく。実際には23社が加盟している「サイバーアシストコンソーシアム」を通じて今回の成果をオープンにし、ユビキタス社会の実現を目的とした実証実験などにも取り組む。実用化時期としては、3−4年後を目指している。
  • 米リアクション・デザイン:ミークス開発担当副社長インタビュー
     2003.11.19−米リアクション・デザイン社は、燃焼やCVD(化学的気相蒸着)プロセスなど、複雑な化学反応機構をモデル化しシミュレーションできる「CHEMKIN」(商品名)を開発している。気相反応/表面反応専門シミュレーターとして世界でも唯一の製品だといわれ、350−400の企業や研究機関で利用されている。主なユーザーは半導体メーカーや自動車メーカー、大学などであり、日本での導入事例が約100件と多いのが特徴である。「日本においては、燃料電池やカーボンナノチューブなど新しいアプリケーションへの適用を期待したい」と述べるエレン・ミークス開発担当副社長に製品戦略を聞いた。
  • ソフトウェア資産管理コンソーシアムが評価基準を策定、実施レベルを判断
     2003.11.20−ソフトウェア資産管理コンソーシアムは19日、企業などが持つソフトウエアの資産管理が適切に行われているかどうかを判断し、管理レベルや改善点を明確にするための評価基準を策定したと発表した。ウェブサイトを通して無償で公開し、広く浸透を図っていく。一年前に定めた管理基準に続き、今回の評価基準が提供されたことで、企業などでの実際の採用が進むと期待される。
  • オラクルワールド基調講演:チャールズ・フィリップス執行副社長
     2003.12.18−オラクルワールド東京が17日、東京ビッグサイトで開幕した。初日の基調講演には「Enabling the Grid − The Power of 10」と題し、戦略とマーケティングを担当するチャールズ・フィリップス執行副社長が登壇。オラクルが推進する企業向けグリッドコンピューティングに移行することのメリットを訴えた。後半にはラリー・エリソン会長による講演のビデオ映像も流されたが、強調されたのはハードウエアがサンからインテルへ、OS(基本ソフト)がWindowsからLinuxへというシフトだったといえる。オラクルの思惑通りに進むと、近い将来にコンピューティング環境の大きな変化が訪れる可能性がある。
  • 米アスペンテック:デビッド・マッキリン社長インタビュー、EOM順調に普及
     2003.12.25−プロセス産業専門のIT(情報技術)ソリューションベンダーである米アスペンテクノロジー(アスペンテック)は、生産現場と基幹業務システムを結ぶことで高度な意思決定を可能にする“EOM”(エンタープライズオペレーションズマネジメント)を推進、欧米では着々と導入実績を重ねつつある。デビッド・マッキリン社長兼CEOに近況と戦略を聞いた。

 


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