CCSニュースファイル
   2010年4−6月

  • 神戸大学・田中成典教授らがインフルエンザたん白質の電子状態計算
     2010.04.03−神戸大学大学院工学研究科の田中成典教授と立教大学理学部の望月祐志准教授らの研究チームが、インフルエンザウイルスの表面たん白質と免疫抗体とからなる巨大分子系を対象とした世界最大規模の量子化学計算に成功した。電子状態解析を通じてどのアミノ酸残基が強く相互作用しているかを明らかにすることができたため、将来のインフルエンザウイルスの変異予測や医薬品開発などに結びつくと期待される。今回の成果は、この3月末まで実施された科学技術振興機構(JST)の戦略的創造研究推進事業「フラグメント分子軌道法による生体分子計算システムの開発」に基づくもので、地球シミュレータを用いて計算が行われた。
  • アクセルリスとシミックスが6月末に対等合併へ、業界再編の口火に
     2010.04.07−米アクセルリスと米シミックス・テクノロジーズが5日、合併することで調印したと発表した。CCS(コンピューターケミストリーシステム)市場のトップベンダー2社が1つになることになる。合併は今年の6月末に完了する予定。新会社の体制や製品戦略などの詳細はまだ明らかになっていない。ここへ来て米国全体でM&Aの動きが再び活発化しているという観測もあり、今後CCS市場でも業界再編が話題を集めそうだ。
  • 菱化システムが名古屋大学のX線結晶構造解析ソフトを商品化へ
     2010.04.14−菱化システムは、このほど名古屋大学で開発されたX線結晶構造解析システムを商品化する権利を取得した。国産パッケージソフトとして10月からの発売を目指す。粉末X線回折データを用いて、原子数が100を越える自由度の高い化合物の構造を決定できることが特徴で、医薬品や有機機能材料の開発に役立つ。現在の技術では、50原子を超えると海外のソフトでも構造決定が難しいが、今回の製品は名古屋大学の特許技術を採用することにより、複雑な物質の構造を推定することが可能になったという。このため、海外での普及もにらんで商品化を進めていくことにしている。
  • インフォコムがKNIMEの有償エンタープライズ版を販売、3製品を提供
     2010.04.21−インフォコムは、このほど創薬研究用のワークフロー型プラットホームとして普及拡大している「KNIME」のエンタープライズ版の国内独占販売権を取得した。もともとは独コンスタンツ大学で開発されたオープンソースのツールで、インフォコムは2008年1月から有償でノード開発やノード集の販売などのビジネスを展開してきている。今回、スイスのナイム・ドットコム社(本社・チューリッヒ、マイケル・バーソルドCEO)と販売提携したことで、プラットホームを含めた統合ソリューションが提供できるようになった。KNIMEは国内でも急速に関心が高まっており、今後の事業戦略が注目される。
  • インフォコムがメタボローム研究用質量分析データ解析ツール
     2010.05.07−インフォコムは、このほど英スペクトラルワークス社と販売代理店契約を締結し、質量分析装置(マス・スペクトロメーター)向けのデータ解析ソフトウエアの販売を開始した。複数のメーカーの装置に対応できるほか、独自アルゴリズムによる混合物の組成解析が可能なことなどが特徴。とくに、メタボローム研究支援ソリューションの一環として売り込んでいく。
  • ビル・ゲイツ氏がシュレーディンガーに1,000万ドルを出資
     2010.05.15−シュレーディンガーは4月27日、マイクロソフトの元会長であるビル・ゲイツ氏の個人所有の投資会社であるカスケードインベストメント社から1,000万ドルの出資を受けたと発表した。ゲイツ氏は、シュレーディンガーのサイエンティフィックアドバイザリーボードの議長を務めるフリスナー教授(コロンビア大学)と親交があり、同社の技術力や将来性を高く評価して投資を決めたという。すでに、世界最大級の米国ヘッジファンドを運営するD.E.ショウ氏からも1995年以来段階的に資金を得ているが、著明な大富豪2人から投資されたCCSベンダーはいまのところ同社だけ。「多くのベンダーの中から当社に投資してもらえたことは光栄であり、技術力の高さの証明だと思っている」(劉士儀マーケティング担当副社長)としている。
  • コンフレックスがMDソフト最新版「AMBER 11」を発売、CUDA対応で高速化
     2010.05.19−コンフレックスは、このほど分子動力学法(MD)ソフトの最新版「AMBER 11」を国内で販売開始した。米カリフォルニア大学を通して製品化されているもので、最新のアルゴリズムが搭載されたことに加え、パソコンのグラフィックボードを並列計算に活用する“GPGPU”対応により、最大100倍の高速計算が可能になったことが特徴。ソフト価格は民間向けが約260万円、アカデミック向けは約8万円となっている。
  • アクセルリスが生物サンプル情報管理システムを初の製品化
     2010.05.26−アクセルリスは、バイオ医薬品などの研究開発で必要になる生物系サンプルの情報管理を可能とするデータベースシステムを開発、「Accelrys Biological Registration」(アクセルリス・バイオロジカルレジストレーション)の商品名で販売開始した。酵母菌、細胞株、DNA、たん白質、プラスミド、ワクチン、抗体、siRNAの8つのカテゴリーで情報を登録・管理できる。従来型の医薬品を対象にした化合物管理システムは多数製品化されているが、生物サンプル情報を扱えるエンタープライズレベルの本格的なデータベースソフトは業界でも初だという。大手製薬会社とコンソーシアムを組んで開発したもので、国内でも関心を集めそうだ。
  • アクセルリスがパイプラインパイロット最新版8.0を発売、64ビット対応など
     2010.06.08−アクセルリスは、化学・製薬・材料分野の研究開発における情報共有とワークフローを実現するプラットホーム製品の最新版「Pipeline Pilot 8.0」(パイプラインパイロット)を開発し、このほど販売開始した。64ビットサーバー環境への対応など、基本的な性能およびセキュリティや管理性も向上し、エンタープライズクラスのソリューションとしての充実が図られた。20を超えるコンポーネントコレクションもそのほとんどがバージョンアップされているが、とくにレポーティング、画像処理、化学、統計に関するコレクションが大幅に機能強化された。
  • シミュレーションズプラスがGastroPlus7.0、点眼・吸入など新経路に対応
     2010.06.16−米シミュレーションズプラスは、薬物動態解析・製剤設計支援ソフト「GastroPlus」の最新バージョン7.0を近くリリースする。経口投与薬剤の消化管での吸収を予測するのが主な機能だが、今回の最新版では追加の投薬経路として“目・肺・皮膚”に対応する機能を実現した。また、薬物同士の競合的抑制(阻害)を予測する機能も盛り込まれた。国内では、代理店のノーザンサイエンスコンサルティングを通して販売される。すでに国内の製薬企業からも高い関心が寄せられているという。
  • アクセルリスがPipelinePilot向けに新しいMaterialsStudioコレクション
     2010.06.26−アクセルリスは、アプリケーション統合とワークフロー自動化を実現するプラットホーム製品「Pipeline Pilot」(パイプラインパイロット)を利用し、材料研究における各種特性予測などを簡単に行えるようにする「Materials Studio コレクション」を製品化した。6月末からリリースする。モデリングの専門家が解析手順を組み立ててワークフローとして登録しておけば、他の研究者がそれを共有して再利用することが可能。計算結果の解析やレポーティングなどの時間のかかる作業を自動化することもでき、研究効率が大幅に向上する。

 

**************<一般ITニュース>***************

 

  • 米レッドハット:クレンショウ副社長(クラウド事業担当)が会見
     2010.04.15−米国レッドハットのクラウド事業担当副社長であるスコット・クレンショウ氏が来日し、14日に記者会見を行った。同事業部は今年から新設されたもので、プラットホーム(Linux)、ミドルウエア(JBoss)に次ぐ、同社の第3の柱となる。仮想化技術の導入にはじまり、プライベートクラウドの構築、パブリッククラウドとの統合へといたるあらゆるステージでのニーズに柔軟に対応する先進的技術を提供していく。とくにクレンショウ副社長は、すでにクラウドデータセンターの大半がレッドハットの技術を導入していることや、オープンソースでクラウド化を進める同社の優位性を強調した。
  • マイクロソフトがOffice2010の製品構成・価格など発表、より低価格に
     2010.04.23−マイクロソフトは22日、「Office 2010」の開発が完了し、企業向けのボリュームライセンス出荷を5月1日から、店頭などでのパッケージ販売を6月17日から開始すると発表した。パッケージ版は「パーソナル」、「ホーム&ビジネス」、「プロフェッショナル」、「プロフェッショナルアカデミック」の4種類があり、それぞれをプリインストールしたパソコンも6月17日から順次出荷が開始される。今回のOffice 2010は、Windows7との組み合わせで企業向けでの更新需要が大きいと期待されているが、パッケージ価格も現行Office 2007より低く設定されており、個人向けにも幅広い普及を目指していく。

 

 

 


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