第1部:総論業界動向
土井プロジェクトレポート第6回
第2部:ADME物性予測システム
第3部:バイオインフォマティクス総論
富士通、日立製作所、NEC、コンパックコンピュータ、サン・マイクロシステムズ、アクセルリス、日立ソフトウェアエンジニアリング、三井情報開発、CTCラボラトリーシステムズ、NECソフト、オラクル
- 日本IBMがライフサイエンス専門組織を新設、一貫サポートを提供へ
2001.10.02−日本アイ・ビー・エム(日本IBM)は、バイオインフォマティクスなどのライフサイエンス分野に焦点を合わせた専門組織「ライフサイエンス事業推進部」を10月1日付で設立した。米IBMは昨年8月に専任部隊を設け、3年間で1億ドルの事業投資を行う計画を表明。今年の3月からは具体的にバイオ研究用のIT(情報技術)システム構築運用のためのコンサルティングを含めたサービスを開始しており、それを日本国内でも展開していく。日本IBMの参入により、日立製作所、富士通、NECに続き、旧大手メインフレーマーの全社がバイオインフォマティクス市場に対する戦略を整えたことになる。
- サイネックスが初のマック版Gaussian98Mを発売、OS Xネイティブ版で登場
2001.10.10−住商エレクトロニクスグループのサイネックスは、科学技術計算ソフトの専門サイト「ネットサイエンス」を通じて、米ガウシアン社が開発した非経験的分子軌道法ソフトウエアの最新版「Gaussian98M」(商品名)の販売を開始した。最新のMacOS
X(オーエステン)に対応。この分野の代表的ソフトであるGaussianがマッキントッシュで動作するのは初めてで、演算能力に優れるハードウエアの性能とあいまって大幅な高速処理が期待できそう。定価は民間向け26万円、アカデミック12万円。
- アクセルリスが国内でたん白質の受託アノテーションサービスを開始
2001.10.24−大手コンピューターケミストリーシステム(CCS)ベンダーの日本法人であるアクセルリスは、たん白質のアミノ酸配列を解析してアノテーション(注釈)を付ける受託事業を開始した。独自の統合遺伝子配列解析システム「GeneAtlas」(ジーンアトラス)を利用して国内に専用のサーバーを設置し、ユーザーから比較的少量の配列データを預かる形でサービスを展開する。米国では、特定ユーザーとのコンソーシアムを組んで同様のサービスを提供しているが、広く受託をするのは日本が初めての試みとなる。費用も安価だとしており、システム導入前のトライアルの位置付けでも利用が可能。
- 医薬分子設計研究所が独自開発のゲノム研究支援ツールKeyMineを発売
2001.10.26−創薬ベンチャーの医薬分子設計研究所(本社・東京都文京区、板井昭子社長)は、バイオ研究者向けのウィンドウズフトウエア「KeyMine」(キーマイン)を独自に開発し、販売を開始した。ゲノムなどの配列データを自分のパソコンに簡単に取り込み、各種の関連情報と合わせてパーソナルな電子ワークスペースとして研究に活用することができる。ソフト価格は68万円(個人購入は24万円)。
- 菱化システムが米アクセルリスのADME予測ツールを発売
2001.11.6−菱化システムは、米アクセルリスが開発したADME(吸収・分布・代謝・排出)予測ツール「C2
ADME」を発売した。統合型分子設計支援システム「CERIUS2」の最新版バージョン4.6の新機能として提供されるもので、新薬開発の初期段階で薬物の吸収性などを考慮することで開発の確度を高め、開発期間を短縮することに寄与する。現在、ブラッドブレインバリア(BBB、血液脳関門)透過性、小腸での吸収性、水への溶解度の3つの特性を計算でき、ソフト価格はそれぞれ200万円。3本セットは500万円。年内受注分は25%引きで販売する。
- 富士通と富士通研究所が半経験的分子軌道法MOPAC2002を開発
2001.11.08−富士通と富士通研究所は7日、半経験的分子軌道法ソフトウエアの最新版「MOPAC2002」(商品名)を開発、販売を開始すると発表した。水などの溶媒効果を考慮したシミュレーションが手軽に行えるようになり、生体内におけるたん白質の立体構造や電子状態を探ることができるなど、ゲノム創薬分野で有用になるとみられる機能性を重点的に強化した。ソフト価格はLinux版が企業・官庁向け60万円、教育機関向け30万円。マルチユーザーライセンスが可能なUNIX版は同様に80万円からと40万円から。2003年3月までに海外も含めて200本の販売を見込んでいる。
- 米IBMが2005年に200テラFLOPSマシン、たん白質機能解明などに活用へ
2001.11.13−米IBMは、米エネルギー省(DOE)の国家核安全保障管理局(NNSA)と世界最高速のスーパーコンピューター開発で提携した。1999年12月に発表された「ブルージーンプロジェクト」を大規模に拡大したもので、NNSA管轄下のローレンス・リバモア国立研究所との共同開発により、2005年に200テラFLOPS(毎秒200兆回の浮動小数点演算を実行)の処理能力を持つ「Blue
Gene / L」(ブルージーン/L)を完成させる。このマシンは、たん白質の折り畳みなどの立体構造解析に大きな貢献をするとみられており、IBMではこのマシンの商用化にも積極的に取り組む計画。
- 日立ソフトが遺伝子情報解析ソフトの最新版を開発、機能統合を強化
2001.11.15−日立ソフトウェアエンジニアリングは、遺伝子情報解析システムを大幅に機能強化し、「DNASIS
Pro」の名称で販売開始した。15年以上前からシーケンス解析の代表的な国産ソフトの一つとして1万本以上の累計出荷実績を持つ「DNASIS」の名前を継承する新製品で、操作性やグラフィック表示機能をさらに向上させ、SNPs
(一塩基多型)解析支援などの新機能を盛り込んだ。同社のバイオインフォマティクス製品の中核として、初年度に国内500本、海外500本の販売を見込んでいる。
- 日本MDLが独ライオンのADME物性予測ツールを発売、吸収・代謝を予測
2001.11.16−日本MDLインフォメーションシステムズは、米MDLと独ライオンバイオサイエンスとの提携に基づき、ADME(吸収・分布・代謝・排出)予測ツール「iDEA」(商品名)の国内での販売活動を開始した。ライオンが今年の3月に買収した米トレガバイオサイエンスの製品で、コンソーシアム形式で昨年に開発されたもの。創薬研究の初期段階の化合物ライブラリーデザインから、非臨床試験に入るフェーズまでの幅広い過程で利用することができる。ウェブ環境で運用でき、サン・マイクロシステムズのサーバーがバンドルで提供される。価格は5ユーザーライセンスで年間2,700万円。
- 富士通がバイオインフォでSE物量作戦、新たにソリューションサービスも
2001.11.19−富士通は、バイオインフォマティクス事業に230名のSE(システムエンジニア)部隊を投入する。計算科学技術センターの既存組織の一部を新たにバイオ専門に割り当てるとともに、関連会社の富士通研究所内にも新組織を設立してバイオ関連のシステム化プロジェクトを担当させる。急速に拡大しているバイオインフォ需要を確実にとらえるための緊急体制を組もうというもので、IT(情報技術)ベンダーとして200名以上のSEをつぎ込むのは、世界的にみてもあまり例がない。少なくとも、コンピューターメーカーのサポート体制では世界一ということになりそうだ。
- NECソフトがたん白質構造解析分野で農業生物資源研究所と共同研究
2001.11.20−NECソフト(関隆明社長)は19日、農業生物資源研究所とたん白質の構造解析・機能予測に関する共同研究契約を結んだと発表した。生物研が民間企業と正式に共同研究をするのは今回が初めて。2005年3月までにかけて、たん白質構造解析技術の改良および産業利用への応用展開を進めていく。
- 日立ソフトが日本ガイシと提携して汎用イースト菌DNAチップを製品化へ
2001.11.21−日立ソフトウェアエンジニアリングは、日本ガイシと提携し、イースト菌の遺伝子を搭載したDNAチップ/マイクロアレイを来年1月に発売する。ガラス基板上に6,400個の遺伝子を乗せたもので、日立ソフトがデザインしたチップを日本ガイシが一手に生産し、販売は日立ソフトが独占的に行う。パソコンのプリンターなどに応用されている“セラミックポンプ方式”を採用した新しい製法のチップで、生産性も高い。日立ソフトは複数の製造技術を駆使できる強みを生かし、用途に応じた展開を図っていく。
- 米シミックスが重合触媒開発HTEシステムを住友化学に導入
2001.12.04−コンビナトリアル材料科学の専門ベンダーである米シミックスは、住友化学工業にハイスループット実験(HTE)支援システム「ディスカバリーツールズ」(商品名)を導入した。ポリオレフィン向け触媒開発に役立てるのが目的で、触媒候補化合物を使った重合実験と評価を、1日に48件のペースで実施することができる。
- コンパックが横浜市立大学にスーパーコン納入、たん白質解析用
2001.12.05−コンパックコンピュータは、横浜市立大学にスーパーコンピューター「アルファサーバーSCシリーズ」を納入した。ポストゲノム分野のたん白質構造解析を中心としたアプリケーションで利用されるもので、この用途では国内最大規模のシステムになるという。
- 菱化システムが米イーオンの力場パラメーター作成ソフトを発売
2001.12.19−菱化システムは、米イーオンテクノロジー(本社・カリフォルニア州、フアイ・サン社長)と総代理店契約を締結し、分子科学計算の精度を高めるための「ダイレクトフォースフィールド」(商品名)の販売を開始した。分子力場法/分子動力学法で利用する“力場パラメーター”をユーザー自身が簡単な操作で作成することができる。これまでは、特殊な分子の系では最適なパラメーターが用意されておらず、計算精度が犠牲になるという問題があった。こうした目的での使いやすいツールが製品化されるのは世界でも初めてだとしており、計算化学の専門家を対象に売り込んでいく。
- 独ライオンバイオサイエンスがゲノム創薬ソリューションで米IBMと提携
2001.12.21−バイオインフォマティクスの最大手ベンダーである独ライオンバイオサイエンスは、ゲノム創薬支援で米IBMと戦略提携を結んだ。強力なIT(情報技術)プラットホーム上でのデータ解析、データ管理、データインテグレーションを通し、ヒトゲノムなどの大量のデータを利用する“ゲノム創薬”をはじめとする新しい病気治療法の開発に寄与することが目的。両社の技術を統合した包括的ソリューションを製薬会社などに提供していく。当面の提携期間は2年間で、以後は1年ずつ延長される。
- 日立ソフトがDNAチップ/マイクロアレイ作製用新型スポッターを開発
2001.12.22−日立ソフトウェアエンジニアリングは、DNAチップ/マイクロアレイの新しい作製装置「SPBIO
II」(商品名)を開発、販売を開始した。従来の機種に比べて生産性が2倍に向上しているほか、防塵・乾燥防止機能の装備で品質向上も実現した。価格は1,500万円で、初年度50台の販売を見込んでいる。
- 菱化システムが独コスモロジックの熱力学物性予測ソフトを発売
2001.12.27−菱化システムは、独コスモロジック社(本社・レーバークーゼン、アンドレアス・クラムトCEO)と総代理店契約を締結し、非経験的分子軌道法(MO)を利用した熱力学物性予測ソフト「COSMOtherm」(コスモサーム)の販売を開始した。医薬品製造などの複雑なプロセスを対象とした化学工学計算、新薬の開発段階におけるADME(吸収・分布・代謝・排出)物性予測などの分野に適用できる。MO計算をこのように利用するシステムは初めて。菱化システムでは、親会社の三菱化学がすでに同ソフトを活用している実績を生かしながら売り込んでいく。
**************<一般ITニュース>***************
- シミュレーション・テクノロジーが次世代プロセスシミュレーターgPROMS
2001.10.16−プロセス産業向けの専門ソフトウエアベンダーであるシミュレーション・テクノロジー(本社・横浜市金沢区、田中耕太郎社長)は、化学プロセスの動的な挙動を予測できるダイナミックシミュレーターの次世代型製品「gPROMS」(商品名)の販売を開始した。これまでのソフトでは対応できなかった不連続系・多次元分散系のプロセス現象を容易に取り扱うことができるほか、プラント全体を常に最適化された状態で動かすオンライン最適化運転を高精度に実現することが可能。とくに、ファインケミカルなどの多品種少量生産型バッチプロセス、グレード切り替えが頻繁なポリマープロセスなどの最適化運転にも初めて対応しており、国内でも大きな反響が予想される。
- 米デルコンピュータ:ロリンズ社長が会見、IT需要回復は来年春から夏
2001.10.30−デルコンピュータのケビン・ロリンズ社長兼COO(最高執行責任者)が29日、都内で記者会見し、世界的なIT(情報技術)不況でパソコン市場全体が落ち込むなか、順調にひとり勝ちを続ける経営状況などについて明らかにした。「デルのビジネスモデルは市場の成長期だけでなく、後退期にも回復期にも、どんな経済サイクルにも対応できるのが強みだ。下半期の日本のパソコン市場は21%ダウンとみているが、それでもデルは伸びるだろう」と絶対の自信をみせた。また、ロリンズ社長は米国を中心とするIT需要の回復に関して、来年の春から夏の早い段階には底を打って回復に転じるとの見方を示した。
- サン・マイクロがウェブサービス体系“SunONE”、MSとの争点が鮮明に
2001.11.1−サン・マイクロシステムズは30日、インターネットを介したウェブサービスを実現するためのシステム体系“SunONE”の概要を発表した。マイクロソフトが推進しているドットネット(Microsoft
.NET)に対抗するもので、目指すところやサービスを構成する要素技術はほとんど共通だが、マイクロソフトが採用していないJavaをベースにしていることと、マイクロソフトの認証技術「パスポート」を受け入れていないことが両者の対立点となっている。マーク・トリバー執行副社長兼iPlanet社長は「SunONEだけが真にオープンで統合できるウェブサービスを提供できる。認証に関してはマイクロソフトの単独支配を許さない“リバティー・アライアンス・プロジェクト”を推進していく」と言明した。
- マイクロソフトコンファレンス2001Fall:阿多親市社長基調講演
2001.11.09−マイクロソフトの阿多親市社長は6日、「マイクロソフトコンファレンス2001/Fall」において「.NETが始まる! ビジネスプロセス革命を加速するマイクロソフトエンタープライズソリューション」と題する基調講演を行い、ウィンドウズXPとドットネット(Microsoft
.NET)が企業の情報システムを革新するビジョンを示した。阿多社長は「ドットネット実現に向けた製品と機能はすでに準備され提供も始まっている」と述べ、国内の先進的ユーザーの事例を紹介した。また、批判の声が高まっているウェブサービスの個人認証技術「パスポート」に関して、「マイクロソフト1社で認証を独占するつもりはない。銀行のATMのように他社の認証サービスと相互乗り入れできるようにしていく」と表明した。
- 米インターグラフ:ゲルハルト・サリンジャーPBS部門社長インタビュー
2001.12.13−プラント設計のためのCAD/CAMシステムの最大手ベンダーである米インターグラフが対日戦略を強化する。2002年から2003年にかけて製品群を日本語化し、現在の主要顧客であるプラント建設やエンジニアリング会社を中心とする設計のプロを対象とした市場に加えて、プラントのオーナーオペレーター企業向けの市場を重点的に攻略する。インターグラフのなかで同事業を担当するプロセス&ビルディングソリューション(PBS)部門の新社長に10月末に就任したばかりのゲルハルト・サリンジャー氏に成長戦略について聞いた。
- 米マイクロソフト:リチャード・ベルーゾー社長兼COO会見
2001.12.14−米マイクロソフトのリチャード・ベルーゾー社長兼COOが13日、都内で記者会見し、パソコンへの全面依存から脱却する新たな“四本柱”戦略について語った。インターネットを情報システムのインフラとする「Microsoft
.NET(ドットネット)」をベースに、企業向けサーバー事業やコンシューマー事業を多角的に展開していくビジョンを示した。
- マイクロソフトが「.NET MyServices」戦略を発表、料金体系も公表
2001.12.18−マイクロソフトは17日、次世代情報システムとして推進しているMicrosoft
.NET(ドットネット)の基盤となるウェブサービス「.NET My Services」(ドットネット・マイサービス)の日本における事業戦略を発表した。来年の初めからソフトウエア開発キット(SDK)の無償提供を開始し、開発環境を含めて試験運用のための体制整備を進めていく。本格的なサービス開始は2003年からになる予定だが、今回国内における早期評価事業者としてジェイアール東日本情報システム、ジェイティービー、ニッセン、NTT東日本の4社が名乗りをあげた。
- 2001年はコンピューターウイルスの猛威が吹き荒れる、巧妙化する手口
2001.12.28−2001年は、かつてない規模でコンピューターウイルスが猛威を振るった。CodeRed(コードレッド)、NIMDA(ニムダ)、Badtrans(バッドトランス)などの被害が一般のマスコミでも大きく取りあげられ、国内でも多くの人がウイルス感染を体験した年だったといえるだろう。ウイルスをつくり出すクラッカー(悪質なハッカー)たちの悪知恵はますます巧妙さを増しており、いまや「メールの添付ファイルを開かなければ感染しない」などの以前の常識はまったく通用しない。来年は携帯情報端末や携帯電話などの無線型機器へのウイルス被害の拡大が予測されており、もはやウイルス対策を実施することはインターネットを利用する個人の義務だという声さえも高まっている。
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